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HOI 4th Exhibition 『Library』by 千鶴・陽斗


 HOI 4回目のExhibition『Library』を2023年6月30日から開催する。昨年6月に東京・清澄白河のギャラリーLONGYにて展示『toki』を行った写真家、千鶴、陽斗2名による合同開催となる。この2名の写真家は当ギャラリーのプロデューサー鈴木暁とも親交が深く、雑誌・広告・展示等、現代のクリエイティヴシーンの第一線で活躍をし続ける嶌原佑矢を共通の師としてもつ。2022年『toki』開催時、千鶴氏は嶌原氏の第一アシスタント、陽斗氏は第二アシスタントとして活動をしており、1年経過した現在では千鶴氏は独立、陽斗氏は第一アシスタントへ昇格と、ともに写真家として着実に成長の歩みを進めている。


 実はこの『Library』、テーマは未確定だったものの『toki』開催時から実行する事を決めていた。それはたった1年という時間の中で、写真家が〝写真を撮る〟〝表現をする〟ということにどう向き合っているのか、苦悩や葛藤、新たに生まれた目標や自身の可能性、そういった若き2名の成長過程も含めた展示として成立させたかったからだ。


 1年という時間は、ライフスタイルによって、365に切り分けることもできれば1000と感じとる事もできる。千鶴氏、西谷氏、人としてはともに穏やかで、写真という表現方法も、静かで清潔感のあるトキをともに切り抜く。しかし根っこにある表現に対する真摯さ、思いの深さは、1年を2000も3000もの時間で過ごしているのだろうと筆者は感じている。


 札幌の地、インスタレーション形式で届ける『Library』。この展示に向けた2名の気持ちを、インタビュー形式で少しだけお伝えさせていただきたい。その上で実際の作品に触れ、それぞれが作品ごとにどんな想いを見出すのか、どんなトキを感じるか、個々の価値観にどんな変化が生まれるか、未完成ながらもクリエイティヴに本気で向き合い続け、未来に向けて進化し続ける2名の今、この瞬間でしかカタチづかない表現を、それぞれのライフスタイルと重ねて堪能していただきたいと願う。


『toki』開催からちょうど1年。札幌での展示のテーマはどのようにして決めていった?


千鶴 / 合同でやるということで、普通の展示だと少し面白みに欠けると思いました。また、北海道でやるという特別さを考えた時に、まずは私たちの中で共通の部分はどんなところなのか、そこを探し出して擦り合わせる作業から始めました。


陽斗 / 2人とも、他者からは穏やかで、もの静かな人間だと思われていますし、自分たちもそういうタイプの人間だと自覚しています。作風もクリーンで落ち着きのある表現を好みます。この共通点をまずは軸にして考えようと、静寂を意味する『Library』をテーマとして動き出しました。


『toki』の際は共通の転写技法を用い、フレームの種類、サイズも共通。作品でそれぞれの個性を出した内容でしたよね。今回は同じテーマでも2部制としましたが、その背景は?


千鶴 / 東京での開催は1週間でしたが、今回は1ヶ月間展示を行えるということで、まずは何か工夫したいなという思いがありました。


陽斗 / 2人で相談していく中で、共通のテーマを持たせながらもそれぞれの個性をより出せるように、また同じ展示期間でも作品が一部入れ替わることで2回楽しんでいただけるようにしようと、前半は僕、後半は前田さんの作品を中心として展示する2部構成としました。


陽斗さんのパートではどんな作品を展示する予定ですか?


陽斗 / 僕は自然を主題として、この展示に向けて作品づくりを開始しました。長野、福島、山形、仙台などに出向いて、他の人が誰もいない、自分だけの静寂な空間の中で、今の自分はそこで何が切り抜けるのか。そんな考えのもと、作品を撮り進めました。時間があまり作れない仕事柄、休みができたら「よし、今から長野に行こう」など、夜中から車を出して、空間を探して、出逢った景色、空間を収めていこと。


千鶴 / 私は日常生活の中でのスナップを主題としています。その中で、空間、物、人工物に焦点を当てた作品を制作しました。普段行き来している所で見るモノであったり、日常的な空間で感じることを切り抜いて、作品として落とし込みましした。改めて展示用に撮り進めていた写真を見返すと、光や透明なモノ、偶発的に生まれた陰影などの写真が多く、展示の準備を進めていく上でより自分の作風が固まってきたようにも思います。


それぞれ、自分自身この1年間でどんな変化が生まれたと感じますか?


千鶴 / 私は今年の3月に独立させていただいたので、生活環境や考え方も大きく変わって。もちろん、ひとつひとつのお仕事を全て自分で準備しなければいけないし、責任も全て自分にある。改めてひとりでやっていくことの大変さを実感しています。ただ、自分だけの時間も多く取れるようになったので、見たいものや、探したいものをインプットする時間が何だか新鮮で、楽しいなとも感じています。好きな作家さんの展示や、それこそ映画を観に行ったり、こんな服着たいな、あんなメイクしたいなというような新しい欲求も生まれるようになって。どんどん新しい価値観を今後も吸収して、その上での表現を突き詰めていくことができればと考えています。写真家としての作風についても、作品ごとのつながりや、光の描写が作品として本当に自然なのか、今までよりも真剣に向き合えていると思います。反面、考えすぎて悩むことや迷うこともありますが、そんな時は自分だけで解決するのではなく師匠に相談してみたり、探り探りではありますが、色々な答えや考え方を出せるようになったと感じています。


陽斗 / 僕は嶌原さんにつかせていただく前から、作家活動は行ってきていたのですが、忙しくてなかなか思うようにアートワークに割く時間を作ることができなくて。以前は人物がメインであったり、少しダークトーンな作品に憧れがあったのですが、そこから環境が変わり、少し作品づくりからも離れていたからこそ、新しい発見が多くあって。自然をテーマとしたことも、僕の中ではとても大きな挑戦で。インスタレーション形式で展示することもそうですが、過去の自分と今の自分が交叉したからこそ新しいモノが見えるようになって、もっと挑戦したいと思う気持ちも強くなってきて。仕事で出会った人たち、東京に出てきてから新しく出逢った友人、そういった他者からたくさん刺激を受けて、今の自分が形成されていたんだなと。


今回の展示に向けての苦労などはありましたか?


千鶴 / 2人でやることはとても難しいことだなと。前回の『toki』はポラロイドの転写という統一の技法を選択したので着地させやすかったのですが、今回は空間をどう作り込んでいくかという最初の部分でつまずきました。陽斗と私で同じことでも見え方が違う、そこの擦り合わせが大変だったなと。ただ、お互いたくさん意見を出して、話し合って、自分だけのエゴだけでなく、相手の気持ちもしっかり理解しながら進めることができたし、新しい見方を教えてもらえるきっかけにもなった。私は以前は展示をするタイプではなかったし、正直苦手意識を持っていました。嶌原さんについて展示を手伝ったり『toki』にチャレンジしてみたりする中で、展示を通して自分を表現することが自体が新鮮だなと思うようになって。自分には向いてないと勝手に決めつけていたのですが、いざやってみると面白さに気づいたというか。苦労もたくさんありましたが、今後も新しい発見や価値観に触れながら、また別の見せ方なども挑戦してみたいなと今では思っています。


陽斗 / 僕もやはり2人でやることの難しさを感じました。たくさん迷いも出てきてしまい……。その中で他の人にアドバイスを聞いたり、前田さんに相談したり、それこそ展示の準備をしていく上で甘えさせてもらうこともあったり……。他者からも自分たちでも、近しいと感じていた僕と前田さんでも、やはり深く掘れば掘るほど違いが生まれてくる。そういった中で、お互いを理解して、つめていく作業があったからこそ、この『Library』がカタチになろうとしています。難しいこともたくさんありましたが、こういったプロセスを経験できたことで自分が新しい表現に挑戦したいとも思えましたし、色々発見もあって未来へのステップにもなっているなと感じています。


最後にこの展示でどういう部分を見てもらいたいかなどありますか?


陽斗 /『Library』での展示作品は、空間も含め心情を表現しています。写真を通して西谷陽斗という人間を読み解いてほしいと思いますし、西谷陽斗という人間を知った上で、写真の感想がどう変わるか、そんなそれぞれが持つ自由な感想を楽しみにしています。6月30日、7月1日は終日在廊しています。是非ご来場ください。


千鶴 / どんな感想でもいいし、写真を通して、それぞれが色々なことを想像して欲しいなと思います。人によって見方や考えは変わると思うけれど、答えは無いですし、答えがたくさんあるのが面白い。いろんな感想を聞いて、今後の表現にも活かしていきたいと考えています。私は7月14日に在廊します。是非遊びにきてくださいね。


HOI 4th Exhibition

『Library』千鶴・陽斗

会期:6月30日(金)〜7月26日(水)

Part 01. 6月30日(金)〜7月11日(火)

Part 02. 7月14日(金)〜7月26日(水)

会場:HOI / 1F Gallery Space

場所:北海道札幌市中央区南2条西27丁目2-20

アクセス:【円山公園駅】改札出口1~4・6方面へ。6番出口「maruyama class」から、地上階へ向かい、STARBUCKS COFFEE側出口を出て、右手に直進。教会が見えたら一つ目の信号を左折。六花亭側へ渡り、左手に見えるガソリンスタンドを目印に更に直進。道なりに進むと見えてくる、白い2階建ての建物がHOIです。

時間:AM11:00〜18:00 /最終入場 17:30

定休日:毎週月曜、木曜・7月12日(水)

入場料:無料(ご予約は不要です)


ARTIST PROFILE

千鶴|Chizuru

1989年 沖縄県生まれ

主にファッション、ビューティー、ポートレート、静物などの撮影を手がける。

私は普段から日常のスナップを主題にして撮ることが多く、今回の

展示のテーマにも沿って撮り下ろし創作した


陽斗|Hinato

1998年 鳥取県生まれ

アシスタントとして生活する中で、ポートレートや自然を中心とした作家活動を行う。

本展では自然と自身の心情を重ね合わせ、創作している。




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